【完全ガイド】土地の相続税が払えない場合はどうする?5つの対処法と注意点
土地を相続したけど、「現金の相続がなかった」「現金をあまり持っていない」などが理由で、「土地の相続税を払えない!」と困っているのではないでしょうか?
土地は相続税評価額が高くなる傾向があり、相続税の支払い負担が重くなりがちです。
多くの方々が「土地の相続税を払えない!」と困っています。
土地の相続税が払えない場合の対処法は次の5つです。
対処法 | 説明 |
---|---|
延納 | 土地の相続税を分割で払っていく方法 |
物納 | 現金の代わりに、相続した土地・自身で購入した財産などを納めて、土地の相続税を払う方法 |
相続した土地を売却 | 相続した土地の売却によって得た現金で、土地の相続税を払う方法 |
借り入れ | 土地の相続税で足りない分を金融機関から借り入れて、土地の相続税を払う方法 |
相続放棄 | 相続を放棄して、土地の相続税の支払い義務をなくす方法 |
それぞれの対処法を、注意点も含め詳しく解説していきます。
このページを読むことで、自身に合った対処法を選択できるようになり、土地の相続税を無事払えるようになるでしょう。
土地の相続税を払わなくてもいい場合や、土地の相続税評価額の計算方法、よくある質問なども紹介していきます。
じっくり読んで、ぜひ参考にしてください。
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土地の相続税を払わなくてはいけない場合とは?
「土地を相続した人全員が相続税を払わなくてはいけない」というわけではありません。
どういう場合に土地の相続税を払わなければならないのかを知って、自身が本当に相続税を払う必要があるのかを確認しておかなくてはいけません。
土地の相続税を払わなくていい場合は、「土地の相続税を払えない」と悩む必要はありません。
土地の相続税は相続財産全体の相続税評価額が基礎控除額を超えたらかかる
相続税には基礎控除という制度があり、相続財産全体の相続税評価額が基礎控除額以下であれば相続税がかかりません。
相続税申告もする必要ありません。
基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人の数」です。
例えば、法定相続人が3人の場合、基礎控除額は4,800万円(=3,000万円+3人×600万円)となります。
相続財産全体の相続税評価額が4,800万円を超えなければ、土地の相続税は無税ということです。
しかし、4,800万円を超えると、土地の相続税がかかってきます。
相続財産には土地だけでなく、預貯金や時計、車なども含まれるので、その点は注意した方がいいでしょう。
土地の相続税評価額の計算方法
土地の相続税評価額は、市場価格とは異なる方法で計算されます。
一般的には、次のいずれかの計算方法を用います。
計算方法 | 説明 |
---|---|
路線価方式 | 計算式: 土地の相続税評価額=路線価(※)×土地面積 路線価(土地が面する道路の価値)に基づいて計算する方法。 路線価は国税庁が設定していて、公示価格(国土交通省が定める土地の値段)の70〜80%程度になっている。 |
倍率方式 | 計算式: 土地の相続税評価額=固定資産税評価額×倍率(※) 固定資産税評価額に一定の倍率を掛けて計算する方法。 固定資産税評価額は市区町村が公示価格の65〜75%程度に設定していて、毎年送られてくる固定資産税の課税明細書に載っている。 倍率は土地の種類によって変わる。 |
基本的に倍率方式よりも路線価方式の方が土地の相続税評価額が低くなるため、路線価方式を用いるのが一般的です。
郊外や田舎では路線価が定められていないことがあり、そのような場合は倍率方式を用います。
例えば、路線価200万円・面積100㎡の土地の相続税評価額を路線価方式で計算した場合、土地の相続税評価額は2億円(=200万円×100㎡)になります。
固定資産税評価額1億9000万円・倍率1.1の土地の相続税評価額を倍率方式で計算した場合、土地の相続税評価額は2億900万円円(=1億9000万円×1.1)になります。
土地の相続税評価額が低くなるほど土地の相続税も低くなるので、両方の方式で土地の相続税評価額を計算し、土地の相続税評価額が低くなる方を選択しましょう。
借地権を設定して他人に貸している土地(貸宅地)の相続税評価額の計算方法
借地権を設定して他人に貸している土地(貸宅地)では、土地の相続税評価額の計算方法が変わります。
「土地の相続税評価額の計算方法」で計算した本来の土地の相続税評価額(以下、自用地評価額と呼ぶ)よりも、土地の相続税評価額が低くなります。
自用地評価額に借地部分でない割合を掛けたものが、借地権を設定して他人に貸している土地(貸宅地)の相続税評価額になります。
計算式は次の通りです。(注)
種類 | 計算式 |
---|---|
借地権割合が設定されている土地の場合 | 自用地評価額×(100%−借地権割合(※)) |
借地権割合が設定されていない土地の場合 | 自用地評価額×80% |
※ 借地権割合とは?
借地権割合とは、土地の中で借地が占める割合のこと。
土地の相続税評価額を計算するときは、実際に借地が占める割合を用いるのではなく、国税庁が土地ごとに設定している借地権割合を用いる。
市場価格が高い地域の土地ほど、借地権割合が高い傾向にある。
田舎や郊外では借地権割合が設定されていない土地があり、そういう場合は借地権割合を20%で計算する。
借地権割合は国税庁のサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率法|国税庁」で調べられるので、ぜひご確認ください。
例えば、自用地評価額2億円・借地権割合10%の土地の場合、土地の相続税評価額は1億8000万円(=2億円×{100%−10%})となります。
借地権を設定して他人に貸している土地(貸宅地)として認められるには、有償で貸している必要があります。
言い換えれば、無償で貸している場合、「借地権を設定していない」という扱いになるということです。
自用地評価額が土地の相続税評価額となり、「借地権を設定して他人に貸している土地(貸宅地)の相続税評価額の計算方法」で計算したときよりも、土地の相続税評価額が高くなってしまいます。
「娘夫婦に無償で貸していた土地の相続税評価額が高くなった」などが起きることがあります。
注.「普通借地権でない場合」や「貸している土地に建物が建っていない場合(貸し付けられている雑種地の場合)」は、土地の相続税評価額の計算方法が違います。
具体的な計算方法は、下記の国税庁のサイトに載っていますので、詳しくはそちらをご確認ください。
- 借地権の種類別の計算方法:No.4613 貸宅地の評価|国税庁
- 貸している土地に建物が建っていない場合の計算方法:第10節 雑種地及び雑種地の上に存する権利|国税庁
土地の相続税率
土地の相続税率は、課税価格が上がるほど税率が上がっていきます。
課税価格とは「土地の相続税評価額から基礎控除額を差し引いた金額」のことで、「課税価格=土地の相続税評価額−基礎控除額」で計算します。
土地の相続税率は次の通りです。
課税価格 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
1,000〜3,000万円 | 15% | 50万円 |
3,000〜5,000万円 | 20% | 200万円 |
5,000万〜1億円 | 30% | 700万円 |
1〜2億円 | 40% | 1,700万円 |
2〜3億円 | 45% | 2,700万円 |
3〜6億円 | 50% | 4,200万円 |
6億円以上 | 55% | 7,200万円 |
結局、土地の相続税はいくらかかるのか?計算方法・計算例
土地の相続税は、課税価格(=土地の相続税評価額−基礎控除額)に相続税率を掛けたものになります。
「土地の相続税=課税価格×相続税率」で計算します。
例えば、次のような場合、課税価格は1億5800万円(=2億円−4,200万円)となり、土地の相続税は4,620万円(=1億5800万円×40%−1,700万円)になります。
- 土地の相続税評価額:2億円
- 基礎控除額:4,200万円(法定相続人2人)
次のような場合、課税価格は0円以下(=3,000万円−4,200万円)となるため、土地の相続税はかかりません。
- 土地の相続税評価額:3,000万円
- 基礎控除額:4,200万円(法定相続人2人)
土地の相続税評価額が基礎控除額を超えたら、土地の相続税がいくらなのかを計算し、「追加でどれくらいの現金を用意しないと、土地の相続税が払えないのか?」を把握しましょう。
土地の相続税を軽減させる4つの特例・控除
土地の相続税には、特例制度・控除制度があります。
これらを適切に活用することで、土地の相続税を大幅に軽減させることができます。
代表的な4つを紹介していきます。
① 小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例とは、 「土地が宅地(=住宅などの建物を建てる土地)の場合、一定の要件を満たせば土地の相続税評価額を最大80%減額できる制度」のことです。
土地の種類・要件別の減額幅は、次の通りです。(注)
土地の種類 | 要件 | 減額幅 |
---|---|---|
亡くなった方が居住していた土地 | 土地を持っていた方が亡くなったときに、亡くなった方と親族が居住しており、相続税の申告期限まで同一の親族が居住すること | 330㎡までの部分は80%減額 |
亡くなった方が貸付事業以外の事業に使用していた土地 | 土地を持っていた方が亡くなったときに、亡くなった方と親族が一緒に事業をしており、相続税の申告期限まで同一の親族が継続して事業を営むこと | 400㎡までの部分は80%減額 |
亡くなった方が貸付事業(※)に使用していた土地 | 土地を持っていた方が亡くなったときに、亡くなった方と親族が一緒に貸付事業をしており、相続税の申告期限まで親族が継続して貸付事業を営むこと | 200㎡までの部分は50%減額 |
注.相続人の属性、土地の貸付先などで、要件・減額幅が異なることがあります。詳しくは国税庁のサイト「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」に載っていますので、そちらをご確認ください。
例えば、相続税評価額2億円・面積500㎡の貸付事業用の土地で、小規模宅地等の特例を使った場合、土地の相続税評価額が4,000万円(=2億円×{200㎡/500㎡}×50%)減額され、1億6000万円(=2億円−4,000万円) になります。
法定相続人が2人(=基礎控除額4,200万円)であれば、土地の相続税が1,600万円(=[{2億円−1億5800万円}×40%−1,700万円]−[{1億6000万円−1億1800万円}×40%−1,700万円])も安くなります。(※ 土地の相続税の計算方法は、前述の「結局、土地の相続税はいくらかかるのか?計算方法・計算例」に記載)
小規模宅地等の特例を利用するときは、次の2点に特に注意が必要です。
- 相続税申告しなくてはいけない
- 相続税の申告期限を過ぎてからでないと売却できない
相続財産全体の相続税評価額が基礎控除額以下の場合は相続税申告しなくてもいいですが、小規模宅地等の特例を使う場合、特例適用後の相続財産全体の相続税評価額が0円以下だったとしても相続税申告しなくてはいけません。
また、要件が「相続税の申告期限まで居住・事業を継続すること」となっているため、相続税の申告期限(=納付期限)以降でないと相続した土地を売却できません。
「土地の相続税が払えないから、相続税の納付期限までに相続した土地を売却する」という選択が取れないということです。
土地の相続税が払えなくて、相続した土地を売却しなくてはいけないのであれば、土地売却と他の対処法を組み合わせて講じる必要があります。
他にも細かな要件があるので、小規模宅地等の特例を使うときは税務署・専門家に相談しましょう。
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土地の相続税の支払いプランも作成いたします。
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「土地の相続税を支払えない場合は、まずこのような行動を取るべき」「あなたの状況を加味したら、この対処法とこの対処法を組み合わせるのが効果的」などを、プロが無料でアドバイスいたします。
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② 配偶者控除
配偶者控除は、「亡くなった方の配偶者が相続する場合、次のいずれかの大きい方が相続税評価額から控除される制度」です。
- 1億6000万円
- 配偶者の法定相続分(※)
例えば、次のような場合、配偶者の法定相続分である2億2000万円(=3億3000万円×2/3)が控除され、配偶者が相続する土地の相続税評価額は8,000万円(=3億円−2億2000万円)になります。
- 法定相続人:配偶者・亡くなった方の親
- 相続財産全体の相続税評価額:3億3000万円
- 配偶者が相続する財産:相続税評価額3億円の土地
逆に、次のような場合は1億6000万円が控除され(配偶者の法定相続分は1億4000万円のため)、配偶者が相続する土地の相続税評価額は0円以下(=1億5000万円−1億6000万円)になります。
土地の相続税がかからなくなります。
- 法定相続人:配偶者・亡くなった方の親
- 相続財産全体の相続税評価額:2億1000万円
- 配偶者が相続する財産:相続税評価額1億5000万円の土地
主な適用要件は次の3つです。
- 民法上の配偶者である(入籍している)
- 相続税の申告期限までに遺産分割が済んでいる
- 期限内に相続税申告する
内縁の妻・夫は民法上の配偶者と認められないため、配偶者控除を使えません。
婚姻歴は関係なく、入籍から1日しか経っていなくても、配偶者と認められます。
遺産分割で揉めて、「相続税の申告期限までに遺産分割が終わらなかった」「期限内に相続税申告できなかった」などの起きた場合は配偶者控除を使えなくなってしまいます。
亡くなった方の配偶者が土地を相続するのであれば、活用した方がいい制度です。
税務署・専門家に相談して、遺産分割・相続税申告をなるべく早く進めていき、要件を満たせるようにしましょう。
配偶者控除の要件・手続きの詳細は、国税庁のサイト「No.4158 配偶者の税額の軽減|国税庁」に載っていますので、そちらをご確認ください。
※ 法定相続人別の控除額
法定相続人 | 控除額 |
---|---|
配偶者のみの場合 | 全額控除 |
配偶者・子どもの場合 | 1/2控除 |
配偶者・亡くなった方の親の場合 | 2/3控除 |
配偶者・亡くなった方の兄弟姉妹の場合 | 3/4控除 |
③ 未成年者控除
未成年者控除は、「18歳未満が相続する場合、18歳になるまでの年数に応じて、相続税評価額が控除される制度」です。(注)
計算式は「控除額=(18歳−財産を持っていた方が亡くなったときの未成年者の年齢)×10万円」です。
例えば、15歳の未成年者が相続税評価額1億円の土地を相続する場合、30万円(={18歳−15歳}×10万円)が控除され、土地の相続税評価額は9,970万円(=1億円−30万円)となります。
18歳未満が相続するのであれば、ほとんどの場合に使える制度です。
ただ、次の2つの要件を満たせず使えない方がたまにいます。
- 相続する未成年者が法定相続人であること
- 財産を持っていた方が亡くなったときに、相続する未成年者が日本国内に住所があること
亡くなった方に配偶者・子どもがいて、未成年者の孫・甥っ子・姪っ子などにも相続する場合、相続する未成年者は法定相続人ではないため、未成年者控除が使えません。
また、相続する未成年者が日本国内に住所がなくてはいけません。
日本国内に住所がない場合は、次のいずれかを満たさなくてはいけません。
- 日本国籍を持っていて、財産を持っていた方が亡くなる前の10年以内に日本国内に住所があったことがある
- 財産を持っていた方が亡くなる前の10年以内に日本国内に住所はなかったが、自身は日本国籍を持っていて、亡くなった方が日本国籍を持っていて日本国内に居住していた
- 日本国籍を持っていないが、亡くなった方が日本国籍を持っていて日本国内に居住していた
例えば、次の2つを満たすような場合は、未成年者控除を使えないということです。
- 相続する未成年者が日本国籍を持っていない
- 亡くなった方は日本国籍だが、仕事などが理由で海外に居住していた
未成年者が土地を相続するのであれば、利用した方がいい制度です。
その他の細かな要件が、国税庁のサイト「No.4164 未成年者の税額控除|国税庁」に載っています。
そちらをご確認して、要件を満たしているか確認しましょう。
要件を満たしているのかどうか微妙な場合は、税務署・専門家に相談するのがいいでしょう。
注.2022年3月31日までの相続では20歳未満が対象でしたが、2022年4月1日以降では18歳未満が対象になりました。
④ 障害者控除
障害者控除は、「障害者が相続する場合、85歳になるまでの年数に応じて、相続税評価額が控除される制度」です。
障害の程度 | 控除額 |
---|---|
一般障害者 | (85歳−財産を持っていた方が亡くなったときの障害者の方の年齢)×10万円 |
特別障害者 | (85歳−財産を持っていた方が亡くなったときの障害者の方の年齢)×20万円 |
例えば、40歳の一般障害者の方が相続税評価額1億円の土地を相続する場合、土地の相続税評価額は9,550万円(=1億円−{85歳−40歳}×10万円)になります。
未成年者控除と同様、相続する障害者の方が法定相続人でなくてはいけません。
亡くなった方の両親がご健在で、障害を持っている祖父母に相続する場合、祖父母は法定相続人ではないため、障害者控除を使えません。
障害者の方が土地を相続するのであれば、ほとんどの場合で使える制度です。
細かな要件が国税庁のサイト「No.4167 障害者の税額控除|国税庁」に載っていますので、そちらを見て、要件を満たせているか確認しましょう。
要件を満たせているかどうか不安であれば、税務署・専門家に相談するのがいいでしょう。
土地の相続税が払えない場合とマンション・戸建てなどの土地以外の不動産の相続税が払えない場合の2つの違い
土地の相続税が払えない場合と、マンションや戸建てなどの土地以外の不動産の相続税が払えない場合では、いくつかの違いがあります。
特に大きな違いは、次の2つです。
- 相続税評価額の計算にかかる時間
- 流動性
それぞれを詳しく説明していきます。
これらの違いを理解しておくことで、土地の相続税が払えないときの特徴がわかり、適切な対処法を選びやすくなります。
違い1:相続税評価額の計算にかかる時間
「土地の相続税評価額の計算方法」で記載した通り、土地の相続税評価額の計算方法は次のいずれかです。
- 路線価方式:路線価×土地面積
- 倍率方式:固定資産税評価額×倍率
路線価・固定資産税評価額・倍率は調べればすぐに出てきますし、よほど前に購入した土地でない限り、土地面積もすぐに把握できます。
どちらの方式を選んだとしても、簡単に計算できるということです。
一方で、マンション・戸建などの土地以外の不動産の相続税評価額を計算するときは、建物の相続税評価額も計算する必要があります。
マンションの場合、市場価格と相続税評価額の乖離率を加味して、建物の相続税評価額を計算しなくてはいけないことがあります。
アパートの場合は空室率を加味しなくてはいけませんし、アパートの建物内に自宅があるならば、自宅部分と賃貸部分を分けて計算する必要があります。
土地の相続税評価額の方が計算に時間がかかりません。
土地の相続税を払えないときの方が「相続税が払えない」と判明するタイミングが早いため、時間をかけて対処できると言えます。
違い2:流動性
流動性とは、「資産を現金化する容易さ」のことです。
一般的に、マンション・戸建てなどの土地以外の不動産よりも、土地の方が流動性が高い(現金化しやすい)です。
土地は購入者が一から自由に建物を建てられるからです。
「家を建てたい」「投資用アパートを建てたい」などの様々なニーズに応えられるため、購入者を見つけやすいです。
特に、都心部の土地は需要が高く、短期間で売却できることが多いです。
一方で、マンション・戸建ての場合、間取り・仕様などがすでに決まっています。
間取り・仕様などを気に入った人しか購入しないため、購入者を見つけるのが難しいことが多いです。
アパートは売買金額が大きく、購入できる人が限られているため、購入者を見つける難易度はさらに上がります。
地方の物件や築年数が古い物件の場合、需要が低く、売却までに時間がかかることが多いです。
土地の相続税が払えないときの方が、「相続税の支払い期限までに相続した土地を売却して、土地の相続税を払う」という対処法が上手くいきやすいと言えます。
マンション・戸建てなどの土地以外の不動産も相続して、相続税が払えず、相続した不動産を売却するのであれば、土地から売却していった方がいいでしょう。
参考記事
土地以外の不動産の相続税が払えない場合の対処法に関するページもございます。
お役に立つかと存じますので、ぜひご一読ください。
土地の相続税が払えない場合の5つの対処法
土地の相続税が払えない場合、多くの方が困り果てます。
しかし、早く適切に対処していけば、たいていは問題なく土地の相続税が払えるようになります。
5つの対処法を紹介していきます。
自分自身の状況を冷静に把握し、最適な対処法を選び講じましょう。
対処法1:延納(土地の相続税を分割払いで支払う)
延納とは、「相続税を分割して毎年支払う制度」です。
延納を利用することで、高額な土地の相続税を一度に払う必要がなくなります。
例えば、土地の相続税が3,000万円・5年間延納した場合、毎年600万円払っていけばいいということです。(注.後述の利子税がかかるため、実際は600万円以上になる)
多額の現金を用意しなくてもよくなりますし、現金の流出も一時的に抑えられます(=個人の資金繰りが良くなる)。
申請すれば誰でも延納できるわけではなく、4つの条件を満たすことが必要です。(※ 延納の条件は、後述の「質問1:延納制度を利用するための条件は?」で詳しく記載)
- 延納する相続税額が10万円以上
- 相続税を現金一括で払えない理由がある
- 相続税の支払い期限までに申請書を提出する
- 延納する相続税額が100万円以上または延納期間が3年以上の場合、担保を提供する
「土地の相続税を一括で払えないが、理由があって相続した土地を売れない」という方におすすめの対処法です。
延納の注意点:利子税がかかる
土地の相続税を延納した場合、次の通り、3.6〜6.0%の利子税が発生します。
相続財産に占める不動産の割合が低くなるほど、利子税の利率は高くなっていきます。
No.4211 相続税の延納|国税庁スクロールできます
区分 延納期間
(最高)利子税
(年割合)特例割合
(※)不動産等の割合が75%以上の場合 ①動産等に係る延納相続税額10年 5.4% 0.6% ②不動産等に係る延納相続税額(③を除く)20年 3.6% 0.4% ③森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額20年 1.2% 0.1% 不動産等の割合が50%以上75%未満の場合 ④動産等に係る延納相続税額10年 5.4% 0.6% ⑤不動産等に係る延納相続税額(⑥を除く)15年 3.6% 0.4% ⑥森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額20年 1.2% 0.1% 不動産等の割合が50%未満の場合 ⑦一般の延納相続税額(⑧、⑨および⑩を除く)5年 6.0% 0.7% ⑧立木の割合が30%を超える場合の立木に係る延納相続税額(⑩を除く)5年 4.8% 0.5% ⑨特別緑地保全地区等内の土地に係る延納相続税額5年 2.2% 0.5% ⑩森林計画立木の割合が20%以上の森林計画立木に係る延納相続税額5年 1.2% 0.1% ※ この表の「特例割合」は、令和5年1月1日時点の「延納特例基準割合」0.9パーセントで計算しています。したがって、「延納特例基準割合」の変更があった場合には、次の表の「特例割合」も変動しますので、延納申請に際し所轄税務署で確認願います。
例えば、次のような場合、毎年の支払いは636〜780万円・利子税は総額540万円となり、納税総額は3,540万円となります。
- 相続税額:3,000万円
- 延納期間:5年間
- 利子税:6.0%
期間 | 納税総額 | 利子税 | 計算式 |
---|---|---|---|
1年目 | 780万円 | 180万円 | 利子税: 3,000万円×6.0% 支払い額: (3,000万円÷5年)+180万円 |
2年目 | 744万円 | 144万円 | 利子税: (3,000万円−600万円)×6.0% 支払い額: (3,000円÷5年)+144万円 |
3年目 | 708万円 | 108万円 | 利子税: (2,400万円−600万円)×6.0% 支払い額: (3,000万円÷5年)+108万円 |
4年目 | 672万円 | 72万円 | 利子税: (1,800万円−600万円)×6.0% 支払い額: (3,000万円÷5年)+72万円 |
5年目 | 636万円 | 36万円 | 利子税: (1,200万円−600万円)×6.0% 支払い額: (3,000万円÷5年)+36万円 |
合計 | 3,540万円 | 540万円 | 利子税: 180万円+144万円+108万円+72万円+36万円 支払い額: 780万円+744万円+708万円+672万円+636万円 |
延納すれば、土地の相続税を一括で払わなくてよくなりますが、最終的な納税総額は高くなってしまいます。
月々の収入・支出などを確認して、支払いの目処を立ててから、延納を利用するようにしましょう。
対処法2:物納(相続した土地などの物で相続税を納める)
物納とは、「現金の代わりに、相続した土地などの物で相続税を納める制度」です。(※)
物納を利用することで、多額の現金を用意する必要はなくなります。
相続した土地などを売却して、わざわざ現金化しなくてもいいです。
土地だけでなく、マンション・戸建てなどの土地以外の不動産や、上場株式、国債・社債などでも物納できます。
延納と同様、申請すれば誰でも物納できるわけではありません。
次の3つの条件を満たすことが必要です。(※ 物納の条件は、後述の「質問2:物納制度を利用するための条件は?」で詳しく記載)
- 延納しても現金で相続税を払えない
- 税務署が定める優先順位が高い財産から物納する
- 相続税の支払い期限までに申請書を提出する
「土地の相続税を払うための現金を、どうしても用意できない」という方におすすめの対処法です。
物納の注意点:土地の物納評価額は市場価格よりも低くなる
土地の物納評価額は、市場価格の70〜80%程度になることが多いです。
土地の相続税を物納するときは、市場価格が土地の相続税額以上の財産を物納しなくてはいけないということです。
例えば、相続税5,000万円を相続した土地で物納する場合、相続した土地は市場価格6,250〜7,143万円(=5,000万円÷80%〜5,000万円÷70%)以上である必要があります。
「思っていたよりも物納評価額が低く、当初の予定より多くの財産を物納することになった」みたいなことが起きることもあります。
専門家などに相談して、「本当に現金を用意できないか?」を確認してから、物納を利用するようにしましょう。
対処法3:相続した土地を売却して、土地の相続税の納税資金を用意する
相続した土地を売却して現金を用意し、土地の相続税を払う方法です。
相続した土地を売却することで、多額の現金を一気に得られます。
売却代金(=得られる現金)は土地の相続税の2.6〜14倍程度となるため、土地の相続税の支払いに困ることはなくなります。(※ 土地の相続税の計算方法は、本記事の「結局、土地の相続税はいくらかかるのか?計算方法・計算例」で記載)
土地の相続税5,000万円・相続した土地の売却価格2億2000万円だった場合、土地の相続税を支払った上で1億7000万円が手元に残ります。(注)
手元に残ったお金は、自宅のリフォーム代・子どもの教育資金・旅行代・上場株式への投資など、自身の好きなことに使えます。
相続した土地の管理・維持も不要になりますし、相続した土地の固定資産税も払う必要がなくなります。
注.相続した土地を売却したときは税金などがかかるため、厳密には手元に残る金額は1億7000万円よりも少なくなります。売却時の税金は、本記事の「質問3:相続した土地を売却したときの税金はどうなる?」で記載していますので、そちらをご確認ください。
土地売却の注意点:売却価格を下げなくてはいけない場合がある
土地の価格は、数千万〜数億円と高額です。
「違い2:流動性」で説明した通り、土地はマンション・戸建てなどの土地以外の不動産よりも購入者が見つかりやすいですが、だからといって、すぐに購入者が見つかるわけではありません。
相続した土地を売却するまでに、都心などの需要が高い土地で最短2週間程度、地方などの需要が低い土地では最短1〜3ヶ月程度かかります。
相続税は「財産を持っていた方が亡くなってから10ヶ月以内」に払わなくてはいけません。
売却価格を大幅に下げないと、相続税の支払い期限までに売却できないケースがあります。
「売却価格を大幅に下げたのに、相続税の支払い期限の直前になっても土地が売れず、時間がなくて他の対処法を講じられない」ということが起きる場合もあります。
相続した土地が需要が高くない場合は、「延納」や「借り入れ」も一緒に講じていった方が安全です。
多数の土地を相続した方(地主の方)で、複数の土地を売却しないと相続税が払えない場合、相続税を払える分だけの土地を売りに出すのではなく、次のような流れで対応した方がいいでしょう。
- 絶対に売却したくない土地以外は全て売りに出す
- 購入者が見つかった土地を随時売却する
- 相続税を払える分だけ売却できたら売るのをやめる
土地の相続税が払えず、相続した土地を売却するのであれば、遺産分割・相続税評価などを早く進め、売却期間をなるべく長く取れるようにしましょう。
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対処法4:土地の相続税で足りない分を金融機関から借り入れる
土地の相続税で足りない分を金融機関から借り入れて、土地の相続税を払う方法です。
借り入れることで、「土地の相続税が払えないかも」という心配はなくなります。
自分たちのペースで相続手続き・相続した土地の売却などを進められます。
例えば、次のようなことができるようになります。
- 遺産分割で揉めないように自分たちが納得いくまで遺産分割協議する
- 海外に住んでいる相続人が来月帰国したときに話し合い
- 相続人全員が仕事が忙しくて話し合えないから、3ヶ月後のお盆休みのときに話し合う
- 相続税の支払い期限直前に相続した土地が売れていなくても、売却価格を大幅に下げて売却しなくていい
次のような方におすすめの対処法です。
- どうしても相続手続きを早く進められない
- どうしても相続した土地を売りたくない
- 相続した土地は売却予定だが、相続税の支払い期限までに売却できるか不安
当然、金利が発生するので、返済目処を立てた上で無理のない範囲で借り入れましょう。
借り入れの注意点:誰でも借り入れできるわけではない
土地の相続税を支払うための借り入れは、住宅ローン・教育ローンなどの世間に馴染みのある借り入れよりも審査が厳しいです。
住宅ローン・教育ローンなどが返済されなかったときは、国が金融機関に未返済分を一部保証するケースが多いですが、相続税支払いのためのローンは、国から金融機関への保証がないケースが多いからです。
金融機関から見たら、リスクが高いローンということです。
次のような場合は借り入れられないことが多いです。
- 収入が少ない
- 中小企業に勤めている
- 今までに返済実績がない
- 過去に滞納したことがある
借り入れ目的が「土地の相続税の納税資金用であるか?」ということも確認されます。
次のような場合は、貸したお金が土地の相続税の納税以外に使われる可能性ありと判断され、審査に落ちてしまいます。
- 様々な人から借金している
- 直近で高額な買い物を繰り返している
- 経営している会社の業績が悪い
たとえ審査が通ったとしても、8%以上の金利が設定されることもあります。
相続した土地を担保に入れたとしても、借り入れられないこともあります。
借り入れ審査には2週間〜1ヶ月程度かかるため、審査結果が出るのが相続税の支払い期限直前になることも多いです。
借り入れだけに頼って土地の相続税を払おうとしていると、相続税の支払い期限直前に審査に落ちた場合、時間がなくて他の対処法を講じられなくなります。
土地の相続税を払えず借り入れするのであれば、「借り入れできたらラッキー」くらいに考えて、他の対処法も同時並行で進めていった方がいいでしょう。
対処法5:相続放棄する
相続放棄とは、相続自体を放棄する方法です。
相続放棄することで、土地の相続税の支払い義務が一切なくなります。
遺産分割などの相続手続きや相続税申告すら不要になります。
ただし、相続放棄すると、土地だけでなく、預貯金・株式などの遺産も一切相続できなくなります。
土地の相続税以上の遺産を受け取れなくなる可能性があります。
例えば、土地の相続税2,000万円・相続分(※)5,000万円で相続放棄した場合、実質3,000万円(=5,000万円−2,000万円)を捨てたことになります。
「土地がいらない」「土地の相続税が払えない」という理由だけでは、相続放棄しない方がいいでしょう。
次のような方でない限り、おすすめしない対処法です。
- 土地の相続税を払うために色々動くのが心底苦しい
- 「土地の相続税を払えない」というストレスから本当に解放されたい
相続放棄してしまうと、相続人である兄弟・姉妹・親などが、土地の相続税を払えなくて困ってしまう可能性があります。
相続放棄するのであれば、他の相続人と十分に話し合ってからにしましょう。
※ 相続分とは、相続によって受け取れる遺産額のこと。
相続放棄の注意点:財産を持っていた方が亡くなってから3ヶ月以内に申請する必要がある
相続放棄の申請期限は、財産を持っていた方が亡くなってから3ヶ月です。
申請には家庭裁判所に行かなくてはいけませんし、専門家に頼んだとしても申請に1ヶ月程度かかることもあります。
実質2ヶ月程度(=3ヶ月−1ヶ月)で下記の3点を確認し、相続放棄するかどうかを決める必要があります。
- 土地の相続税はいくら払えないのか?
- 土地の相続税で足りない分を本当に用意できないのか?
- 他の相続人は相続放棄に納得しているのか?
3ヶ月経った後の申請は、基本的に受け付けてもらえません。
相続放棄を少しでも検討しているのであれば、土地の相続税計算・家族との話し合いなどの相続放棄する前にやらなくてはいけないことを、なるべく早く進めていった方がいいでしょう。
相続した土地が農地の場合の対処法:農地の納税猶予の特例を利用する
相続した土地が農地の場合、「農地の納税猶予の特例」を使えることがあります。
農地の納税猶予の特例とは、「次の2つの要件を満たした場合、本来の土地(農地)の相続税評価額から農業投資価格を差し引いたものが土地(農地)の相続税評価額になる制度」です。
- 亡くなった方が亡くなる日まで農業を営んでいた、または農地を貸し付けていた
- 農地を相続する人が相続税の申告期限までに農業経営を始めて以降も農業経営を続ける、または相続税の申告期限までに農地を貸し付けた
計算式は「土地(農地)の相続税評価額=本来の土地(農地)の相続税評価額−農業投資価格(※)」となります。
※ 農業投資価格とは、「農業をやっている農地で、売買が成立されるであろう金額」のことです。
計算式は「農業投資価格=(土地面積÷1,000)×1,000㎡あたりの農業投資価格」です。
1,000㎡(10アール)あたりの農業投資価格は、20〜90万円に設定されていることが多いです。
国税庁のサイト「財産評価基準書 路線価図・評価倍率法|国税庁」で公開されていますので、そちらをご確認ください。
例えば、本来の土地(農地)の相続税評価額7,000万円・土地面積100,000㎡・1,000㎡(10アール)あたりの農業投資価格50万円で、農地の納税猶予の特例を使った場合、農業投資価格は5,000万円(={100,000㎡÷1,000}×50万円)となり、土地(農地)の相続税評価額は2,000万円(=7,000万円−5,000万円)になります。
農地の納税猶予の特例を使うことで、土地(農地)の相続税が大幅に減ります。
延納、相続した土地(農地)の売却、借り入れなどの他の対処法を講じなくても、手持ちの現金だけで土地(農地)の相続税を払えるようになるでしょう。
手持ちの現金だけで払えなかった場合でも、用意しなくてはいけない現金が少なくていいため、次のように対処しやすくなります。
- 担保提供をしなくても延納できる
- 相続した土地(農地)の一部だけを売却する
- 資金使途が自由で審査基準が緩いローンで借り入れる
「相続した土地が農地だった」という方におすすめの対処法です。
税務署・専門家などに相談して、まずは「農地の納税猶予の特例を使えないか?」を確認しましょう。
注.農業をやっている農地であれば、基本的に農地の納税猶予の特例を使えますが、一部の農地では使えないことがあります。農地の適用要件は、次の2つの国税庁のサイトで公開されているので、詳しくはそちらをご確認ください。
注意点:農地の納税猶予を打ち切られたら、納税猶予されている土地(農地)の相続税を払わなくてはいけない
次の2つが、農地の納税猶予の特例の主な打ち切り条件です。
いずれかを満たしてしまうと、納税猶予されている土地(農地)の相続税の全額または一部を納付しなくてはいけなくなります。
- 相続した人が亡くなった場合を除き、特例を受けた土地(農地)で農業を20年続けなかった
- 特例を受けた土地(農地)を売却・贈与・転用などをした(※ 面積の20%以上の場合は全額納付)
納税猶予されている土地(農地)の相続税を納付するときは、利子税も一緒に納付しなくてはいけません。
例えば、納税猶予されている土地(農地)の相続税1,000万円・利子税1.2%/年・相続してから15年後に全額打ち切りの場合、利子税180万円(={1,000万円×1.2%}×15年)となり、納付総額は1,180万円(=1,000万円+180万円)になります。
農地の納税猶予の特例を受けた土地(農地)は、自由に売却・贈与などができません。(注.厳密には、売却・贈与はできるが特例が打ち切られる可能性がある)
売却・贈与などをするときは、税務署・専門家に随時相談する必要があります。
土地の相続税が払えないとどうなる?払わなかったときの4つのリスク
土地の相続税が払えないと、主に4つのリスクが生じます。
これらを理解した上で、対処法を選択し講じていく必要があります。
リスク1:延滞税・加算税がかかる
支払い期限までに土地の相続税を払えない場合、延滞税・加算税が発生します。
それぞれの税率は次の通りです。
種類 | 税率(注1) | 説明 | ||
---|---|---|---|---|
延滞税 | 支払い期限の翌日から2ヶ月経過するまでの期間 | 2.4%/年 | 特徴 ・支払い期限までに相続税を払わなかったら発生 ・相続税の未納額(滞納額)に税率・支払い期限の翌日から支払った日までの日割りを掛けて計算 ・支払うまでの期間によって税率が変動 ・支払い期限から1日経過するごとに加算されていく 計算式 相続税の未納額×税率×(支払ったまでの日数/365日) | |
支払い期限の翌日から2ヶ月経過した後の期間 | 8.7%/年 | |||
無申告加算税 | 税務調査の通知を受ける前に申告 | 5% | 特徴 ・相続税申告が申告期限(=支払い期限)を過ぎたら発生 ・申告した相続税額に税率を掛けて計算 ・申告した相続税額・税務調査の通知有無・税務調査の実施前後によって税率が変動 ・過去の申告状況・過去の税務調査の結果などによって、税率が10%上がることがある 計算式 申告した相続税額×加算税率 | |
税務調査の通知を受け、税務調査実施前に申告 | 税額50万円以下の部分 | 10% | ||
税額50〜300万円の部分 | 15% | |||
税額300万円以上の部分 | 25% | |||
税務調査実施後に申告 | 税額50万円以下の部分 | 15% | ||
税額50〜300万円の部分 | 20% | |||
税額300万円以上の部分 | 30% | |||
過小申告加算税 | 税務調査の通知を受ける前に修正申告 | 0% | 特徴 ・申告した相続税額が、正しい相続税額よりも低かったら発生 ・税務調査の通知前に自ら修正申告したら発生しない ・修正申告前の相続税額(または50万円)と、修正申告後の相続税から修正申告前の相続税額(または50万円)を差し引いた部分に税率を掛けて計算 ・修正申告前後の相続税額・税務調査の通知有無・税務調査の実施前後によって税率は変動 計算式 修正申告前の相続税額(または50万円)×税率+{修正申告後の相続税額−修正申告前の相続税額(または50万円)}×税率 | |
税務調査の通知を受け、税務調査実施前に修正申告 | 修正申告前の相続税額と50万円のいずれか大きい方の部分 | 5% | ||
修正申告前の相続税額と50万円のいずれか大きい方を、修正申告後の相続税額から差し引いた部分 | 10% | |||
税務調査実施後に修正申告 | 修正申告前の相続税額と50万円のいずれか大きい方の部分 | 10% | ||
修正申告前の相続税額と50万円のいずれか大きい方を、修正申告後の相続税額から差し引いた部分 | 15% | |||
重加算税 | 過少申告の場合 | 35% | 特徴 ・相続財産を隠す・相続負債を増やすなどの悪質な手法を使って、相続税額を意図的に少なく申告したら発生 ・正しい相続税額よりも少なく申告していた分に税率を掛けて計算 ・無申告かどうかで税率が変動 計算式 (修正申告後の相続税額−修正申告前の相続税額)×税率 ※ 無申告の場合、修正申告前の相続税額は0円になります | |
無申告の場合 | 40% |
例えば、次のような場合、延滞税25.75万円・加算税225万円(=50万円+175万円)となり、合計250.75万円となります。
- 修正申告前の相続税:1,000万円
- 修正申告後の相続税:1,500万円
- 相続税の支払い時期:支払い期限の5ヶ月後
- 相続税の申告時期 :申告期限より後で税務調査の通知前
- 過少申告の修正時期:税務調査後
種類 | 税額 | 計算式 |
---|---|---|
延滞税 | 25.75万円 | 1,000万円×2.4%×2/12+1,000万円×8.7%×(5−2)/12 |
無申告加算税 | 50万円 | 1,000万円×5% |
過少申告加算税 | 175万円 | 1,000万円×10%+(1,500万円−1,000万円)×15% |
合計 | 250.75万円 | 25.75万円+50万円+175万円 |
当然、延滞税・加算税とは別で、土地の相続税も払わなくてはいけません。
納税総額が、本来払えば良かった土地の相続税の最大1.4倍以上(=無申告での重加算税+延滞税)になってしまうこともあります。
リスク2:他の相続人と仲が悪くなる
土地の相続税を払えない場合、他の相続人に土地の相続税の支払い義務が生じます。(※ 相続税の連帯納付義務と言います)
他の相続人は、最大で「相続財産から支払った相続税を差し引いた金額(=他の相続人の相続財産−他の相続人が納付した相続税)」まで、土地の相続税を払わなかった人の代わりに相続税を払わされます。
例えば、次のような場合、相続人Bは残った相続財産の全額750万円(=800万円−50万円)を、相続人Aが払っていない土地の相続税に充てなくてはいけません。
相続人Bは、相続財産がなくなってしまいます。
- 相続人A:土地の相続税1,000万円を払っていない
- 相続人B:800万円の財産を相続し、相続税50万円を払った
他の相続人が、土地の相続税を払えない人の代わりに相続税を払わなかった場合、他の相続人の財産が差し押さえられてしまうこともあります。(※ 財産の差し押さえは、本記事の「リスク3:財産が差し押さえになる」で詳しく記載)
土地の相続税を払わなければ、他の相続人に迷惑をかけます。
恨まれることもあるでしょう。
仲の良かった兄弟・姉妹・親などと、一生口も利かない関係になってしまう可能性があります。
リスク3:財産が差し押さえになる
土地の相続税を払えないと、財産を差し押さえられることがあります。
差し押さえが始まるのは、次の3つの条件を満たしたときの場合が多いです。
- 税務署からの督促状を無視している
- 他の相続人が土地の相続税を代わりに払わなかった
- 1年以上、土地の相続税を未納・滞納している
相続した土地だけでなく、貯金・株式・貴金属・持ち家・車・時計・家具などの自身の財産も差し押さえ対象になります。
差し押さえられた財産は、競売で現金化されて、土地の相続税に充てられます。
競売での売却価格は、市場価格の50〜70%程度になるのが一般的です。
言い換えれば、市場価格が土地の相続税以上の財産を差し押さえられてしまうということです。
土地の相続税1,000万円を未納・滞納していて差し押さえが始まった場合、市場価格で1,429〜2,000万円程度(=1,000万円÷70%〜1,000万円÷50%)の財産を差し押さえられます。
次のような場合、他の相続人の財産の差し押さえが始まります。
- 土地の相続税を払っていない人が財産を持っていない
- 土地の相続税を払っていない人が現金化しづらい財産しか持っていない
基本的には、現金・株式などの現金化しやすい財産から順に差し押さえられていきます。
「子どもの授業料・塾代を払えなくなった」「配偶者が大病にかかったが治療費を払えない」など、自身・他の相続人の生活に大きな悪影響を及ぼすことがあります。
リスク4:個人の信用情報が傷付く
土地の相続税を払えなくて、財産を差し押さえられてしまうと、個人の信用情報が傷付くことがあります。
信用情報とは、「ローン・クレジットカードなどの審査のときに確認される情報」のことです。
信用情報に傷が付いていると、「お金を返してくれない可能性がある」と判断され、次のようなことが起こります。
- 新たな借り入れ審査が通らない
- 住宅ローンの審査に通らない
- 金利を異様に高く設定された
- クレジットカードの限度額が減額された
- 法人で融資を受けるときに他の人の個人保証を求められた
最悪の場合、「教育ローンを組めず、子どもが大学に行けなかった」「法人で運転資金を借りられず、倒産しまった」などが生じることもあります。
信用情報は、生活・ビジネスをしていく上で極めて重要なものです。
一度傷付いた信用情報が戻るまでに、5〜10年と言われています。
言い換えれば、5〜10年間は生活・ビジネスに支障をきたすということです。
たとえ信用情報が傷付いていなかったとしても、土地の相続税を払っていなければ、納税証明書に「未納」と記載されてしまいます。
住宅ローン・教育ローンの審査、賃貸マンションの審査など、納税証明書を求められる審査には落ちてしまうでしょう。
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「延滞税が取られる」「財産が差し押さえられる」などが起きてからでは適切な対処ができない可能性もあるので、とりあえず無料相続相談だけでも受けてみてください。
土地の相続税が払えない場合の4つの相談先とサポート内容
土地の相続税が払えない場合、適切な専門家・プロに相談することが重要です。
4つの相談先と、それぞれのサポート内容を紹介していきます。
相談先1:相続専門の無料相談窓口
相続専門の無料相談窓口とは、「土地相続のプロから無料でアドバイスを受けられる場所」です。
無料相談窓口のスタッフは、土地相続に関する税金・法律などの幅広い知識を持っています。
「土地の相続税が払えない」という悩みを解決するためのアドバイス、土地の相続税支払いに関する疑問を解消するための情報、などをもらえます。
例えば、次のようなことを相談できます。
- 土地の相続税が払えない可能性があります。まずは何からやればいいでしょうか?
- 土地の相続税が払えないのですが、どのように対処するのが私には適切でしょうか?
- この対処法を講じようと思っているのですが、この対処法を選択するのは正しいですか?
- 複数の対処法を一緒に講じるとき、どのようなメリット・デメリットがありますか?
相続専門の無料相談窓口に相談することで、土地の相続税が払えない場合はどのように進めていけばいいのか?どのように進めていくのが効率的なのか?などが分かります。
初歩的なさえ知らなければ、動き出しが遅くなり、選べる対処法の幅が狭まります。
適切な対処法を選べなくなる可能性が上がるということです。
少しでも「土地の相続税を払えないかもしれない」と不安を感じたら、真っ先に相談した方がいいでしょう。
次のような方におすすめの相談先です。
- 初めての土地相続で、土地の相続税支払いに関する知識がない方
- 土地の相続税が払えないかもしれないと不安な方
- このままでは土地の相続税が払えないことが確定しているが、何から手を付ければいいのか分からない方
- 土地の相続税を払うための対処法はなんとなく決まったが、対処法を講じていく際のアドバイスがほしい方
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相談先2:税理士
税理士は、「相続税申告・相続税評価額の計算などの相続税に関するプロ」です。
土地の相続税評価額の適切な計算方法、土地の相続税・相続した土地を売却したときの税金の節税方法、などのアドバイスがもらえます。(注.相談料がかかる場合があります)
例えば、次のようなことを相談できます。
- 土地の相続税はいくらくらいになりますか?
- 私が使えそうな特例はありますか?
- 相続した土地を売却予定なのですが、土地の相続税と売却時にかかる税金の合計額を減らす方法はありますか?
税理士に相談することで、土地の相続税をどれだけ払わなくてはいけないのか?結局、土地の相続税と売却時にかかる税金で合計どれだけ払う必要があるのか?などが分かります。
土地の相続税をどれだけ払えないのか(=準備すべき納税資金)によって、適切な対処法は変わります。
実際に土地の相続税を払うための対処法を決めることになったら、相談した方がいいでしょう。
次のような方におすすめの相談先です。
- 土地の相続税計算に関する知識がない方
- 土地の相続税を計算するために、何から始めればいいのか分からない方
- 土地の相続税を自身で申告するのが不安な方
- 土地の相続税を正確に計算して、現金を追加でどれだけ用意しなくてはいけないのかを知りたい方
相談先3:司法書士
司法書士は、「遺産分割協議書の作成や相続した土地の名義変更(=相続登記)などの相続手続きに関するプロ」です。
土地の相続税支払いのために用意すべき現金が減るような遺産分割案、相続人全員での相続税の合計が安くなる遺産分割案、などのアドバイスがもらえます。(注.相談料がかかる場合があります)
例えば、次のようなことを相談できます。
- 相続財産は現金と土地なのですが、どのように遺産分割すれば相続人全員が土地の相続税支払いに困りにくくなりますか?
- 相続人全員の相続税の支払い総額を抑えたいのですが、どのように遺産分割するのがいいですか?
- このように遺産分割するという話で進んでいるのですが、この遺産分割方法は間違っていないですか?
司法書士に相談することで、どのように遺産分割するのが適切なのか?この遺産分割方法ではどのようなデメリットがあるのか?などが分かります。
遺産分割方法によって、土地の相続税額(=用意すべき納税資金)が変わり、土地の相続税が払えない場合の対処法も変わります。
他の相続人と土地の相続税支払いまで加味した話し合いができないのであれば、相談した方がいいでしょう。
次のような方におすすめの相談先です。
- 土地の相続手続きに関する知識がない方
- 適切な土地を遺産分割方法が分からない方
- 自身で土地の相続手続きをするのが不安な方
相談先4:自治体の無料相談窓口
多くの自治体は、相続の無料相談窓口を設置しています。
土地相続に関する一般的な質問に回答してもらえます。
例えば、次のようなことを相談できます。
- 何をやれば土地の相続が完了したことになりますか?
- 土地相続のことをほとんど分かっていないのですが、何から手を付ければいいですか?
- 自治体特有の制度はないですか?
- 土地相続のことを依頼できるプロ・税理士・司法書士などを紹介してくれませんか?
自治体の無料相談窓口に相談することで、土地相続に関する簡易的な情報を収集できます。
ただし、実際の現場経験に基づいたアドバイス、相談者の状況を加味した上でのアドバイス、などは受けられないこともあります。
「遺言書が無ければ、法定相続分に応じた比率で土地を分ける」「土地を相続したら相続税が発生する」などの超初歩的な情報を知りたいのであれば、相談した方がいいでしょう。
次のような方におすすめの相談先です。
- 土地相続に関する知識が一切ない方
- とりあえず土地相続に関する情報を収集したい方
土地の相続税が払えない場合によくある4つの質問と回答
土地の相続税が払えない方から多く寄せられる4つの質問と、それぞれの回答を紹介します。
これらを知っておくことで、自分に合った対処法を選ぶときの参考となるでしょう。
質問1:延納制度を利用するための条件は?
土地の相続税を延納するときの条件は次の4つです。(※)
- 延納する相続税額が10万円以上
- 相続税を現金一括で払えない理由がある
- 相続税の支払い期限までに申請書を提出する
- 延納する相続税額が100万円以上または延納期間が3年以上の場合、担保を提供する
これらを全て満たさなければ、延納申請は却下されてしまいます。
却下されるときに多いのは、「条件2:相続税を現金一括で払えない理由がある」を満たせていないことです。
土地の相続税を払えないということは、土地を相続して所有しているということです。
「相続した土地を売却すれば一括で払える」「売却価格を下げれば相続した土地を売却でき、一括で払える」と判断されて、延納申請が却下されることがあります。
何らかの理由で本当に相続した土地が売却できなかったとしても、上場株式・貴金属・持ち家などの自身で購入した財産があれば、「自身で購入した財産を売却すれば、一括で払える」と判断されてしまうこともあります。
また、「条件4:延納する相続税額が100万円以上または延納期間が3年以上の場合、担保を提供する」を満たすために提供する担保は、税務署が認めた担保でなくてはいけません。
認められる担保は次の6つです。(※)
- 国債・地方債
- 社債・上場株式などの有価証券
- 土地
- 保険をかけている建物・立木・船舶などの現物資産
- 鉄道財団・工場財団などの抵当権
- 税務署長が確実と認める人からの個人保証
これらの財産を持っていないのであれば、延納申請は通りません。
誰でも延納できるわけではありません。
延納制度を利用するときは、税務署・専門家などに要件を満たせているか確認しましょう。
※ 延納の条件、延納で認められる担保などの詳細は、国税庁のサイト「No.4211 相続税の延納|国税庁」に載っていますので、そちらをご確認ください。
質問2:物納制度を利用するための条件は?
土地の相続税を物納するときの条件は次の3つです。(※)
- 延納しても現金で相続税を払えない
- 税務署が定める優先順位が高い財産から物納する
- 相続税の支払い期限までに申請書を提出する
「条件2:税務署が定める優先順位が高い財産から物納する」を満たすのが、極めて面倒です。
相続した土地よりも、上場株式・貴金属・持ち家などの自身で購入した財産の方が優先順位が高いと判断されたら、自身で購入した財産を物納しなくてはいけません。
物納の優先順位は次の通りです。(※)
順位 | 財産の種類 | 補足 |
---|---|---|
1 | 不動産、船舶、国債証券、地方債証券、上場株式 など | 特になし |
2 | 物納劣後財産に該当する不動産・上場株式 | 物納劣後財産とは、下記のような財産を指す。(※) ・道路に2m以上接地していない土地 ・法令によって建物を建てられない土地 ・過去の事件・事故などが理由で、正常に売却できない可能性がある土地 ・事業を休止している法人の株式 |
3 | 非上場株式 など | 自身がオーナーを務める非上場会社の株式、個人で出資している非上場会社の株式などを指す。 |
4 | 物納劣後財産に該当する非上場株式 | 物納劣後財産の説明は「順位2:物納劣後財産に該当する不動産・上場株式」の補足に記載。 |
5 | 動産 | 貴金属、絵画、自動車、家具などを指す。 |
自身で購入した財産がなく、相続した土地を物納するしかなかったとしても、相続した土地が次のような条件を満たすならば物納に使えません。(※)
- 抵当権が設定されている土地
- 権利を争っている土地
- 境界線が明らかになっていない土地
- 物納する財産の評価額(=収納価格)と比較して、管理・処分の費用が大きすぎる土地
また、納税者側が物納する財産の評価額(=収納価格)を計算しなくてはいけません。
計算が誤っていたら、「物納を却下される」「追加の物納を求められる」などが起きてしまいます。
延納と同様に、誰でも物納できるわけではありません。
物納制度を利用するときは、税務署・専門家などに要件を満たせているか確認しましょう。
※ 物納の条件、物納の優先順位、物納する財産の要件などの詳細は、国税庁のサイト「No.4214 相続税の物納|国税庁」に載っていますので、そちらをご確認ください。
質問3:相続した土地を売却したときの税金はどうなる?
相続した土地を売却した場合、次の3つの税金が発生します。
税金 | 説明 |
---|---|
印紙税 | |
譲渡所得税 | 譲渡所得(相続した土地の売却価格から取得費用(※1)・譲渡費用(※2)・特別控除(※3)を差し引いた金額)に課税。 土地を所有していた期間によって税率が変動。 土地売却の翌年に支払う。 税率は後述の「譲渡所得税・住民税の税率」に記載。 |
住民税 |
※1 取得費:亡くなった方が土地を購入した代金・土地購入時の仲介手数料・相続登記費用などの土地購入にかかった費用の合計
※2 譲渡費用:土地売却のための測量費用・土地売却時の不動産会社への仲介手数料など、土地売却にかかった費用の合計
※3 特別控除:一定の要件を満たしたときに、譲渡所得から控除される金額のこと。相続した不動産が居住用・空き家だった場合に適用されるため、相続した土地の売却時には適用できないことが多い。
印紙税の税額は次の通りです。
売却価格 | 印紙税 |
---|---|
10〜50万円 | 200円 |
50〜100万円 | 500円 |
100〜500万円 | 1,000円 |
500〜1,000万円 | 5,000円 |
1,000〜5,000万円 | 1万円 |
5,000万〜1億円 | 3万円 |
1〜5億円 | 6万円 |
5〜10億円 | 16万円 |
10〜50億円 | 32万円 |
50億円〜 | 48万円 |
譲渡所得税・住民税の税率は次の通りです。
所有期間 | 譲渡所得税率(※4) | 住民税率 |
---|---|---|
短期(5年以下) | 30.63% | 9.0% |
長期(5年超) | 15.315% | 5.0% |
参考:No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)|国税庁
参考:土地や建物を売ったとき|国税庁
相続してから3年以内に相続した土地を売却する場合、譲渡所得から「合計の相続税額×(売却する相続した土地の課税価格/相続財産全体の課税価格)」を差し引けます。(※5.6)
譲渡所得税・住民税が下がるということです。
「譲渡所得=相続した土地の売却価格−取得費用−譲渡費用−特別控除−合計の相続税額×(売却する相続した土地の課税価格/相続財産全体の課税価格)」となります。
※5 課税価格の計算方法は、前述の「土地の相続税率」で記載
※6 譲渡所得から差し引ける金額の詳細な計算式は、国税庁のサイト「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例|国税庁」に載っていますので、そちらをぜひご確認ください
例えば、次のような場合、印紙税6万円・譲渡所得税1,488万円・住民税437万円となり、合計1,931万円の税金がかかります。(※ 譲渡所得・印紙税・譲渡所得税・住民税の計算式は下記に記載)
- 売却価格:4億円
- 取得費用:2億5000万円
- 譲渡費用:1,500万円
- 土地を相続してから売却するまでの期間:1ヶ月
- 合計の相続税額:1億800万円
- 売却する相続した土地の課税価格:2億4000万円
- 相続財産全体の課税価格:3億円
種類 | 金額 | 計算式 |
---|---|---|
譲渡所得 | 4,860万円 | 4億円−2億5000万円−1,500万円−1億800万円×(2億4000万円/3億円) |
印紙税 | 6万円 | |
譲渡所得税 | 1,488万円 | 4,860万円×30.63% ※ 小数点以下を四捨五入 |
住民税 | 437万円 | 4,860万円×9.0% ※ 小数点以下を四捨五入 |
相続した土地を売却したら、翌年に譲渡所得税・住民税が大きくかかってきます。
相続した土地の売却代金全額を土地の相続税に充ててしまうと、翌年の納税ができなくなってしまいます。
「対処法3:相続した土地を売却して、土地の相続税の納税資金を用意する」を講じるのであれば、売却時の税金まで加味して戦略を立てる必要があるでしょう。
多数の土地を相続したのであれば(=地主の方の場合)、次のように対応するのがいいでしょう。
- 土地の相続税を払えなくて、相続した土地を売却するときに、譲渡所得税・住民税の分も余分に土地を売却する
- 相続した土地を売って相続税を払った後、翌年の譲渡所得税・住民税までに一部の土地を売却する
土地の相続税評価額の計算方法によっても、相続した土地の売却時の税金は変わってきます。
相続した土地を売却するのであれば、土地の相続税と相続した土地の売却時の税金の合計が安くなるように、税理士と相談しましょう。
質問4:土地の相続税の納税資金を借り入れるときに気を付けることは?
土地の相続税の納税資金を借り入れるときは、「本当に返済できるような条件なのか?」に気を付けましょう。
金融機関によって条件は異なりますが、「事業融資ですでに金融機関から数億円単位で借り入れている」「優良企業のオーナー経営者で、金融機関が取引したがっている」などの場合でない限り、相続税の納税資金を借り入れるときは金利2〜7%程度・返済期間3〜10年程度になることが多いです。
金利が高く、返済期間が短いため、住宅ローンと同じような考え方で借り入れてしまうと、月々の返済がキツくなってしまいます。
例えば、土地の相続税で足りない分1,000万円を金利5%・期間5年で借り入れた場合、月々の返済は188,712円・利子の合計は1,322,720円となります。(注.元利均等返済を想定)
期間 | 返済金額 | 返済金額のうちの利子 |
---|---|---|
1年目 | 2,264,544円 | 458,988円 |
2年目 | 2,264,544円 | 366,614円 |
3年目 | 2,264,544円 | 269,513円 |
4年目 | 2,264,544円 | 167,448円 |
5年目 | 2,264,544円 | 60,157円 |
合計 | 11,322,720円 | 1,322,720円 |
返済条件も厳しいことが多く、次のような条件が付くことがあります。
- 返済が遅れたら一括返済
- 負債が資産を超過したら一括返済
返済できない状態が続くと、自己破産せざる得なくなってしまうこともあります。
返済目処を立てた上で、「本当に返済できるのか?」を確認してから、借り入れるようにしましょう。
次のようなローンもあります。
- 相続した土地を売るまでの間だけ、相続した土地を担保に入れて借り入れるローン
- 相続した土地を担保に入れて、1〜20年間借り入れるローン
- 担保なし・借入期間なし・資金使途自由で借り入れるローン
これらは審査が通りやすい傾向にありますが、金利が高めに設定されていることが多いです。
利用するのであれば、「本当に返済できるのか?」をより慎重に確認しましょう。
まとめ
土地の相続税が払えない場合の対処法は5つです。
どれもメリットもあれば、デメリットもあります。
自身の状況を把握して、適切な対処法を選んでいく必要があります。
まずは次の流れで、どれくらいの現金を用意しないと土地の相続税が払えないのか把握しましょう。
その後、「土地の相続税が払えない場合の5つの対処法」を読み返し、自身に合った対処法を選んで、計画的に講じていきましょう。
相続税の支払い期限は10ヶ月と決まっているため、とにかく早く動き出すのが重要です。
動き出しが遅れると、「相続税の支払い期限が近づき過ぎてて、適切な対処法を選べない」ということが発生する可能性があります。
少しでも「土地の相続税が払えないかもしれない」と思ったら、専門家に相談した方がいいでしょう。
多数の土地を相続したのであれば(=地主の方の場合)、土地の相続税が高く、対処に時間がかかることが多いです。
なおさら早く動き出した方がいいでしょう。
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